スタジオジブリの最新アニメ映画「コクリコ坂から」ですが、公開から10日ほどたったので、そろそろネットでも評価が集まりつつあります。
初日の観客動員は3位発進だったそうですが、超人気作「ハリポタ」の完結編などが同時公開だったので、まぁとりあえずこんなものかも。
ネットのレビュー・評価・感想をまとめてみると、マイナスの評価として
「盛り上がりに欠ける」
「昔の話なので、今の観客にわかりにくい」
といったものがわりと目立ちました。
「盛り上がりに欠ける」というのは、従来のジブリアニメと違って、ファンタジーの要素が皆無ですから、そのような部分を言っているのかも。
またお話自体も、大きな波は確かにないです。しかし日常生活をていねいに描くことが基盤になっている話ですから、観客の求めているもの自体がズレているような気がします(作品の方向性の問題ではなく、観客の質の問題)。
カルチェラタン取り壊し問題&大そうじイベントという強い縦軸と、松崎海と風間俊の恋愛&出生問題という横軸の絡まりが非常に絶妙で、かなり玄人(くろうと)好みの映画だと思いました。
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そういう意味では、大人向けの映画かもしれません。確かに一定以上の年齢でないと、すぐには理解できない単語(ガリ切り、朝鮮戦争)、また共有しにくい雰囲気(とつぜん合唱を始める、当時の学生運動の盛り上がり)などは、さすがに小学生以下では厳しいでしょう。
しかし、私は思うんですけど、映画ってそんなにわかりやすくないといけないものでしょうか?
私子供の時分に今は亡き父親に、けっこう大人向きの内容の映画に何回か連れて行ってもらった記憶があります。
その時は確かに意味はわからない部分もあったし、今考えると登場人物の感情などを誤解していた部分もありましたが
私を子供扱いしなかった父に対して、今では感謝の気持ちの方が強いです。
だいたい子供というのは、大人が考えるより内面は大人びているものです。
大人は喜々として子供を「子供扱い」して満足していますが、いつもいつも大人が考える「子供のレベル」に併せるよりも、たまには少し背伸びした内容のものを見せた方が、よっぽど人格の形成に役立つと思います。
その時は意味がわからなくてもいいんです。
映画を観て10年、20年たってから「あの時は意味がわからなかったけど、今なら登場人物の気持ちや、背景がなんとなくわかる」ということでいいのでは?
すぐれた映画とはそうしたものでしょう。よい映画というのは決して観客に一から十まで親切ではない。
たとえば、親子でこの「コクリコ坂から」を観に行って、「ガリ切り」「学生運動」「朝鮮戦争」などが子供がわからなければ(人によっては親の方も厳しいでしょう)、一緒に調べたらいいんです。
今はネットという便利なものがあります。調べるのはネットでもいいと思います。
例えばこのブログでは↓こういった記事があります。
>コクリコ坂から ガリ切りとは 意味
>コクリコ坂から 国際信号旗 海がコクリコ荘から上げる旗の意味は?
>コクリコ坂から LST 朝鮮戦争
また、子供は好奇心旺盛ですから、必ずしも親が一緒に調べてあげなくても、知りたいことは自分で勝手に調べるでしょう。
最近の観客は、物語に対して手っ取り早い「わかりやすさ」「とっつきやすさ」ばかり求めて、物語の背景を知ろう、感じようという能動的な態度がほとんどないような気がします。
「コクリコ坂から」は、子供にとっては「ちょっと背伸びした大人のアニメ映画」だと思います。
ちょっと背伸びしなければ、精神的な成長はないかもです。
子供と行く映画はいつもいつも「ポケモン」や「戦隊もの」ばかりでなくていいと思いますよ?